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◆基調講演

 

●テーマ:「バスの可能性と期待」

●講演者:太田勝敏東京大学大学院工学系研究科教授

 

皆さんこんにちは。
今日のバスシンポジウムに先立ち、私の方から少しバスの可能性を期待するということで話をさせて頂くことを大変光栄に思っています。今日申し上げたいことは、基本的に現在のバスを取り巻く、或いは都市交通を取り巻く状態を多少話し、その上で公共交通というものがいかに大切であるか、その中でバスはどの様な役割を持っているのか、その辺を話して具体的に新しい魅力あるバスサービスというものをどの様に創っていくのがよいか、その可能性について海外の事例を含めながら紹介させて頂きたいと思います。最後にそれらを含めて、私の考えるこれからの「人・まち・環境にやさしいバス」の実現に向け、具体的にどの様な課題があるか問題提起をさせて頂きたいと思います。
はじめに背景ということで都市交通のパラダイムシフトという難しい言い方をしているが、基本的に私どもの考えてきた都市交通の仕組みが、様々な点で一つの曲がり角に立っているといえます。具体的には車とどの様に付き合っていくのか、街にとって或いは我々の将来にとってよいのかという点で考え直すべき転機にあるというのが第一の認識です。
車依存社会の反省ということで書いてあるが、結局、車が便利というだけではなく、車を使わないと生活ができないという状態まで至った時に、はじめてそれに伴う社会的問題・環境問題、渋滞或いは交通事故の問題も浮上し、加えて高齢化社会を迎える中で、運転免許を持ち運転している人が後期高齢者といわれる75歳以上になり実際運転ができなくなった場合、自分の周りにそれを手伝ってくれる人、或いは行きたいところに行ける様な仕組みがあるのかを考えると自らが交通弱者になりかかっていることを自覚せざるを得ないと思っています。その様な中で欧米を含めて、世界的に車への依存性を改め考え直す動きがでていると思います。とくに新しい動きとしては地球環境問題や自動車のもたらす様々な問題が注目される中、今後の都市計画・都市政策、或いは開発政策全体に係るが交通に対しても同様のことが各国で政策の一つの視点ということで見直されていると思います、将来の世代にも現在、エンジョイ・享受している自然とか資源を残しながら次の世代にも選択の機会を残していくという基本的にはその様な考え方と理解しているが、将来に向けて現在の車依存をもう少し緩和できないだろうか。場合によっては車自身を変え、併せて新しいモビリティ社会を創っていくということを求められているのではないかと思っています。その中でどの様な形で実現していったらよいのか、ということになると車が有する利便性、低廉性、容易性等を背景に受け入れられてきたことで、大変大きな社会生活上のメリットをもたらしてきたらしいが、それに対して代替手段は見過ごされてきた、或いはそれが充分新しい魅力をもたないうちに我々のライフスタイルが変わってきたことに原因があるのではないかと思います。そして代替的な都市の交通手段とは何かという議論に入らざるを得ないが、基本的にそれは公共交通機関であり、或いは徒歩であり、自転車であると思っています。これからの都市交通のシステムは、車も一つの手段としてあげられるが、その他にも沢山の手段があり、状況に応じて使い分けることが可能な、充分魅力があるといった代替的な交通手段をそれぞれの状況に応じて

 

 

 

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